平均で200万円程度かかるといわれる高額な葬儀費用。急に亡くなり相見積もりを取らずに1社に任せた場合、どうしても葬儀社の言いなりに高ランクでの設定やオプションを加えてしまいがちです。葬儀代を少しでも安く抑えるためにはどうしたらいいでしょうか。葬儀費用の構成から考え、安くなる方法について検討してみましょう。なおここでいう葬儀とは、一般的な仏教式であれば通夜、葬儀・告別式全体を指します。
葬儀費用の構成と安くなる要素
葬儀費用の構成は大きく分けて、
- 葬儀施行費(葬儀社関連の費用)
- 接待・返礼品費
- 宗教関連費
の3つからなります。
葬儀施行費
葬儀社ではコースによって祭壇、生花、棺などランク分けがされています。葬儀施行費を安くするためには、参列者の層や人数の検討が必要です。故人が高齢であれば参列者数も少なくなり簡素な形態で構わないでしょう。しかし、故人が著名な場合や、高齢でも経営者であった場合などは、どうしても小規模では行いにくいものです。世間体を気にせず簡素な小規模なものにすれば費用は抑えられます。
接待・返礼品費
接待・返礼品費は参列者数、飲食の人数に比例します。少人数で行えば費用は下がります。また通夜・葬儀を1日で行えば飲食が1回になり費用は下がります。
宗教関連費
宗教関連費は宗教的儀式を行わず宗教者を呼ばなければ儀式に関する費用はかかりません。ただし、仏教式の場合はお墓との関係で戒名の問題があります。戒名などいらないと考えれば費用は当然かかりません。ただし、通夜・葬儀を1日で行った場合、読経料を半額にできるかどうかは、寺院との事前の打ち合わせが必要でしょう。寺院側から慣習に反するとの考えが出る場合もあります。基本的にはお布施ですから、半額とはいかないまでも2~3割の減額は可能かと思われます。
葬儀の形態の決定
喪主、遺族は、生前本人の自分の葬儀のあり方、希望について聞いておき、できるだけ本人の意思に沿って行われるとよいでしょう。しかし、実際には遺族が世間体を気にするなどして、慣習に沿って行う場合もあります。
まずは、どのような葬儀の形態で行うのか遺族間で検討し決定します。費用を抑えるという視点から、葬儀の形態を以下に紹介します。
家族葬
平均寿命が80代となり90代で亡くなる方も増えてきました。当然仕事の関係はなくなり知人・友人も減ってきます。存命でも高齢になれば葬儀への参列は減少し、参列者は遺族・親族が中心となります。家族葬とはそのような時代の反映であり、一般葬儀の小規模なものといえます。葬儀自体の内容は一般葬と変わりません。
費用は40万~90万円台など、葬儀社でプラン化されたものが多くあります。ただしプランには含まれていないものもあり、喪主の側で検討していくうちにランクアップしがちで、実際には100万円台となる場合が多いようです。
この費用は葬儀施行費のみであり、接待・返礼品費、宗教関連費は含まれていません。
一日葬
一般的な葬儀では通夜、告別式(火葬)と2日間かけて行われますが、通夜を省略し告別式・火葬までを、仏式であればさらに初7日法要までも1日で済ませるのが一日葬です。
遺族・親族にとっても精神的、身体的負担が減り、経済的にも価格が減少します。ただし2日を1日にすれば費用が半分になるかというとそうでもありません。通常の葬儀料金の設定が会場費など2日セットになっているため半分にならず、宗教関連費も半分にはしにくいものです。2~3割減なら交渉可能でしょう。確実に減らせるのは通夜振る舞いの費用です。
問題は、仏教式を中心に慣習・しきたりを重視する寺院の了解が必要な点です。また葬儀が1日なので参列できない人が一定数出ることや、しきたりを重視する人からは葬儀の手抜きと捉えられることがあります。
葬儀施行費は40万円~ですが、接待・返礼品費、宗教関連費は含まれていません。葬儀全体では3割程度の費用の減少は可能でしょう。
無宗教葬
友人葬、偲ぶ会、送る会などの名称で行われる場合があります。故人の親しい友人や家族に囲まれて送るものです。宗教者を呼ばずに宗教的儀式を行いません。故人の生前の意思に基づく場合が中心です。
火葬のみ先行して行い、お骨となってから葬儀を行なえば、葬儀場を使わずホテル、レストランでも行うことができ、食事の選択も自由になり、会場の雰囲気を明るく行うことも可能です。
問題は仏教式での菩提寺との関係で、戒名とお墓です。戒名をつけず、お墓も新規に寺院以外の公営墓地、宗教を問わない民営墓地であれば問題ありません。戒名を求め寺院の墓地に入る場合は、菩提寺に事前の了解をとることが必要でしょう。
費用は、後述する直葬形式で葬儀社に依頼すれば葬儀施行費が大幅に安くなります。また会場費、飲食費は喪主側で葬儀社によらずに自由に選択・支払い、香典もなくしてしまい会費方式でやる方法もあります。宗教関連費がなくなり、接待・返礼品費のうち返礼品関係がシンプルなものになります。逆にパーティのように食事にこだわれば食事代が高くなり、特別のイベント演出をすればその費用が加わります。
また費用は会場費、飲食費、演出費により大きく変動します。
後述の直葬を20万円とした場合、参列者を50人とし飲食・記念品・会場費を含め1人1万5,000円とすれば、20万円+75万5,000円=95万5,000円となります。参列者数によりますが60万~100万円が目安でしょう。
直葬
儀式的な葬儀を行わず火葬のみを行うものです。遺族以外の参列者がいない場合、費用を大幅に安く抑えたい場合などで行われます。火葬のみといっても、火葬代以外に棺、寝台車、ドライアイス、供花、葬儀社の人件費などの費用は必要です。
葬儀社でも直葬のプランがあり、都市部を中心に扱っています。火葬関連費用だけですから接待・返礼品費、宗教関連費はかかりません。ただし戒名やお墓の問題は別途あります。葬儀社の直葬プランの料金は20万円程度からです。
最後に
一般的な仏教式の葬儀の形態を選ぶ場合、制約されるのが檀家制度による寺院との関係です。寺院との関係が悪くなればお墓の問題になり、既存のお墓に入る場合は納骨の受け入れ可否の問題になります。
葬儀とお墓は一体の問題であり、関連づけて検討する必要があります。お墓のない自然散骨という埋葬や、お墓を建てず自宅の手元に置いておく方法もあります。お骨を粉末にする専門業者もあります。
時代は葬儀に関して小規模で世間体にこだわらずに、費用を抑えた方向に向かっているのは確実です。