葬祭業界歴約20年、葬祭ディレクターの小川竜雲です。不慣れな葬儀への参列で、少し緊張しながら自分のお焼香の順番を待つ…多くのかたが経験されたことがあるのではないでしょうか。お焼香は仏教、葬儀においてとても重要な意味合いがあります。そこで今回は、お焼香の意味や方法についてご紹介します。
お焼香の意味
まずは、お焼香とは何かというと、お香を焚くことを指します。お香を焚くことで香りを出すわけですが、お焼香はこの香りが重要な意味を持ちます。
お焼香の種類
一般的にお焼香というと、細かく砕かれた木片をつまみ、香炉にパラパラとくべるものをイメージされるかたが多いと思いますが、お焼香には主に2種類あります。
ひとつめは、多くの方がイメージされる木片を香炉にくべる方法です。細かく砕かれた木片のことを「抹香(まっこう)」といいます。この「抹香」を指先でつまんで、香炉にくべます。
もうひとつは、線香を手向ける方法です。あまりイメージがないかもしれませんが、線香を手向ける方法も、お焼香の方法のひとつなのです。
この焼香方法の使い分けには諸説あるようですが、葬儀のように多くのかたがお焼香する場合には抹香を使い、自宅の仏壇やお墓でお参りをするときなど、一人ひとりの時間がある場合には線香を使うという考え方が一般的です。
お焼香は何のためにするのか
お焼香の目的には諸説ありますが、主に目的とされているのは下記の5つです。
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仏法僧に供えるため
仏教では「仏=仏様」、「法=仏様の教え」、「僧=僧侶の集団や僧侶の社会」を三宝と呼び、重要視しています。お焼香は、この三宝に香りを供えるものであるという考え方があります。 -
自分自身および場を浄めるため
仏様や故人に対して供養を行う前に、自分自身と、その場所を香りによって浄めるという目的です。 -
仏様や故人の食物として供えるため
仏様や故人は香りを食べ物として召し上がるという考え方があります。 -
仏様を荘厳するため
荘厳とは、仏様を祀るにふさわしい飾りつけを行うことをいいます。花や灯明に加えて、香りも飾りつけの重要な要素のひとつとされています。 - 極楽浄土の世界を表現するため
極楽浄土は、よい香りで常に満たされているといわれています。香を焚くことで、この極楽浄土の世界を表現することが目的という説もあります。極楽浄土の世界に身を置いている様子を体感し、仏様との一体感を得ようとするものです。
お焼香の方法
お焼香は遺族親族、ほかの参列者など、多くのかたがたの目に触れるものなので、失礼のないように、恥ずかしくないように行いたいものです。お焼香の回数など宗派によっても異なる部分もありますが、この点については後述します。
ここでは葬儀場にて抹香でお焼香を行うときの、宗派関係なく共通する全体の流れを紹介します。
全体の流れ
- 葬儀社係員の案内があるまで待つ。
- 係員の案内に従って焼香台へと進む。
- 焼香台の手前で遺族に対して一礼をする。
- 一歩前に進み、祭壇に祀られた本尊や故人に対して一礼をする。
- お焼香をする(回数などは後述)
- 合掌する。
- 合掌しながら一礼し、身体を起こしたら合掌を解く。
- 一歩下がり、再度祭壇に祀られた本尊や故人に対して一礼をする。
このあとは、自分の席に戻る場合と、そのまま式場を出る場合など、葬儀場や地域によって動きが変わりますので、係員の案内に従うようにします。
なお4と8で「祭壇に祀られた本尊や故人に対して一礼をする」と記載しておりますが、宗派によっては一礼する対象は本尊のみという考え方をするところもあります。
お焼香の宗派別回数や作法
仏教の主な宗派ごとの焼香の回数や方法は下表のとおりです。
宗派 | 回数 | 方法 |
---|---|---|
天台宗 | 1回または3回 | 抹香を右手の指先でつまみ、額のところまで掲げてから、香炉にくべる |
真言宗 | 3回 | 抹香を右手の指先でつまみ、額のところまで掲げてから、香炉にくべる |
浄土宗 | 1~3回 | 抹香を右手の指先でつまみ、額のところまで掲げてから、香炉にくべる |
浄土真宗 本願寺派 | 1回 | 抹香を右手の指先でつまみ、そのまま香炉にくべる |
浄土真宗 大谷派 | 2回 | 抹香を右手の指先でつまみ、そのまま香炉にくべる |
時宗 | 1~3回 | 抹香を右手の指先でつまみ、額のところまで掲げてから、香炉にくべる |
臨済宗 | 1回 | 抹香を右手の指先つまみ、そのまま香炉にくべる |
曹洞宗 | 2回 | 1回目は抹香を右手の指先でつまみ、額のところまで掲げてから、香炉にくべる。 2回目は、抹香を右手の指先でつまみ、そのまま香炉にくべる |
日蓮宗 | 1回または3回 | 抹香を右手の指先でつまみ、額のところまで掲げてから、香炉にくべる |
表の中で「香炉にくべる」とありますが、これは香炉の中に着火された炭が据えられていますので、この炭の上にパラパラと抹香を落とすことです。あまり高い位置から落とすと抹香が散らばってしまいますので、炭の5cm程度上から落とすとよいでしょう。
なお、自分の家の宗派とは違う葬儀に参列した場合、お焼香はどうしたら良いでしょうか。例えば、自分の家は浄土真宗本願寺派だけれども、曹洞宗で行われる葬儀に参列するようなケースです。
このような場合は、自分の家の宗派に従ったお焼香の回数、方法で行えばよいとされています。
そのほか、仏教以外の宗派で、お焼香をすることに抵抗感がある方がいるかもしれません。この場合には、お焼香をせずに、一礼だけで済ませても問題はありません。
最後に
今回は、お焼香の意味や方法についてご紹介しました。とくに、お焼香の意味や目的を知っておくことは大事なことだと思います。たとえ方法が合っていたとしても意味もわからずお焼香をするのと、意味を理解してお焼香をするのとでは大きな違いがあります。きっとそれは相手に伝わる印象としても違いが表れてくるものではないでしょうか。葬儀に参列する際には、今回の内容を参考にしていただければと思います。