ホームへ戻る

カテゴリー

新着記事

ここ1ヶ月間の人気の記事

死亡したら銀行口座が凍結!?

銀行口座凍結の流れや解除方法を解説します

銀行口座凍結の流れや解除方法を解説します

葬祭業界歴約20年、葬祭ディレクターの小川竜雲です。葬儀の打ち合わせをするとき、時折「(故人の)銀行口座からお金を引き出すから、死亡届を出すのは明日にしてくれる?」などと言われることがあります。このように、死亡届を役所に提出すると銀行口座が凍結されると思っている方がいらっしゃいますが、実際にはどうなのでしょうか?今回は、死亡と銀行口座の凍結、凍結の解除方法について解説します。

銀行口座の凍結とは

銀行口座の凍結とは、銀行だけでなく信用金庫や信用組合など、金融機関の預金口座について入出金、解約、名義変更などあらゆる手続きができない処置がされることです。保険料やローンの返済で口座振替を利用している場合にも、引き落としが停止されてしまい、小切手の決済も不可能となります。

凍結は主に「債務整理」、「相続」、「犯罪など不正利用の疑い」という3つを理由に実施されます。「死亡したら銀行口座の凍結」というのは、このうち「相続」に関係して故人名義の銀行口座が凍結されるものです。

口座の凍結は、金融機関が死亡情報を入手した時点で速やかに実行されます。

死亡情報は金融機関にどう伝わるのか

死亡した情報が、病院や役所から自動的に銀行などの金融機関に流れる仕組みになっているわけではありません。

基本的には遺族からの申し出により、金融機関は死亡情報を知ることになります。そのほかにレアケースではありますが、新聞の死亡広告や、取引先などからの噂話がきっかけになることもありますが、その場合には必ず遺族に対して死亡の事実確認が行なわれます。

銀行口座凍結の目的

じつは、口座の凍結は法律的に決まっているわけではなく、金融機関がそれぞれの規定に基づいて実施します。

判例上、故人名義の預金口座に残っているお金は、死亡と同時に相続財産の対象になるとされています。このため、銀行としては「相続トラブルを避けるため」に口座の凍結をするのです。

例えば、故人の口座から、家族の誰かがほかの相続人に内緒で現金を引き出したとします。その後、現金を引き出した事実を知った相続人から「相続について何も決まっていないのに、なぜ勝手に引き出させたのか」と銀行に対する苦情が発生し、銀行は責任を追及される可能性があります。

相続財産としての預金残高は、相続財産の分配方法が確定するまでは、相続人の共有財産という位置づけです。つまり共有財産ということで、一時的に相続人全員のもので、家族のうち1人だけのものではないのです。

もちろん大前提として、故人の口座はあくまで故人だけのものであり、本来は故人以外の人間が口座から現金を引き出したり、振込を実施したりしてはいけないという考え方があります。

故人の口座から葬儀費用を引き出すのはよい?

本記事の前文で触れた家族もそうでしたが、葬儀費用としてまとまった現金が必要になるため「故人の銀行口座から預金を引き出しておきたい」と考える方がいらっしゃいます。場合によっては葬儀費用だけでなく、手術や入院費用など病院への支払があるということも考えられます。

実際のところ、キャッシュカードを利用すればATMで現金を引き出すことができてしまいます。しかし、故人の銀行口座は故人のものであり、本来は遺族であっても他人は現金の引き出しはしてはならないものです。

2019年の改正民法のこと

本来は「故人の預金口座から現金を引き出すことはしてはいけない」わけですが、この問題は2019年改正民法で改善されるようです。

2019年の改正民法によって、葬儀費用などで必要な資金については故人の凍結された預金口座から預金の引き出しが可能となります。引き出す方法は、基本的に次の2つとされています。

  1. 家庭裁判所に必要な金額や内容を申し立て、認証を受けて預金を引き出す。
  2. 一定割合の金額に限り、銀行など金融機関の窓口へ行き預金を引き出す。

この「一定割合」の金額は、金融機関ごとに定められ、おおむね100~120万円が想定されているようです。
家庭裁判所への申し立ては手間も時間も必要となりますので、実際には金融機関の窓口を利用されるかたが多くなるのではと思います。

銀行口座の凍結が解除されるまでの流れ

ここからは、銀行口座の凍結が解除されるまでの流れをご説明します。
凍結解除の手続きは金融機関によって異なるため、おおまかな流れとしてお考えください。

凍結を解除してもらうためには、遺言や遺産分割協議などにより相続財産の内容、分割方法が固まってから、金融機関で相続手続依頼書などの手続きを行う必要があります。

  1. 遺言の確認
    遺言に相続に関する記述がある場合には、この内容に従うことになります。
  2. 相続人の確定
    相続財産を受け取る権利がある人を調査して確定する。
  3. 相続財産の調査、確定
    不動産、動産、各種権利、借金など財産を調べ、総額の把握をします。
  4. 遺産分割協議書の作成
    相続人で集まり、分配金額や方法を決め。遺産分割協議書として記録します。
  5. 銀行など金融機関での手続き
    手続き方法は金融機関によって異なりますが、主に次のような書類の提出を求められます。

    • ・相続手続依頼書(書式は金融機関による)
       ※一般的に相続手続依頼書には、相続人全員の署名捺印が必要です。
    • ・被相続人(故人)の戸籍謄本
    • ・相続人(遺産を受け取る権利がある人)の戸籍謄本
    • ・相続人の印鑑証明書
    • ・遺言書
    • ・遺産分割協議書
    • ・凍結解除を依頼する対象口座の通帳、印鑑
      とくに書類に不備がなければ、金融機関での手続きは2~3週間程度で完了します。
  6. 凍結解除
    決定事項に従って相続人で預金の分配を行います。

「法定相続情報証明制度」のススメ

銀行口座の凍結解除手続きでは、相続人と被相続人の出生から現在までの戸籍謄本が必要となる場合が多いのですが、手続きごとに大量の戸籍謄本を手配するのは大変です。

そういったときは「法定相続情報証明制度」が便利です。この「法定相続情報制度」は、全国の法務局(登記所)で利用でき「法定相続情報一覧図」の写しを交付してもらうことができるのです。

「法定相続情報一覧図」は、戸籍謄本だと各人数分として相当な枚数、部数であったものが1枚でこと足りるようになっています。なお、「法定相続情報一覧図」の交付手数料は無料です。

最後に

今回は、死亡と銀行口座の凍結について解説しました。口座の解除手続きは、金融機関ごとに必要となります。そのため亡くなったかたが、多数の口座を所有していた場合には、それだけ負担が増えます。元気なうちに、不要な口座は解約しておくことは、遺される側のことを考えると大事なことです。