家族が亡くなり自分が相続人になった場合や、将来そのような事態が訪れる場合を考え、相続の知識を持っておく必要があります。親などが相続対象となる財産をどの程度持っているか、子どもはよく知らないものです。預貯金や不動産のほか、どのようなものが財産となるのでしょうか。また、相続対象とはならないものの相続税のかかる財産などを整理してまとめてみました。
目次
相続の対象となる財産、相続税のかかる財産とは
税務署の相続税の資料を見ると、相続税の計算方式は次のようになっています。
[(相続や遺贈によって取得した財産の価額)+(相続時精算課税適用財産の価額)
―(債務・葬式費用の金額)]+(相続開始前3年以内の贈与財産の価額)=各人の課税価格
相続や遺贈によって取得した財産とは、本来の相続財産に加えて、「みなし相続財産」というものを加えたものです。これについては後ほど説明します。
「相続時精算課税」とは贈与税の課税方式のひとつで、60歳以上の親また祖父母から20歳以上の子どもまたは孫への贈与が対象です。2,500万円までの特別控除があります。
贈与者が亡くなったとき(相続時)には贈与を受けた財産を加えて相続税を計算します。これは、故人から生前贈与を受けたものと受けなかったものとの公平を図る制度です。
それでは、相続や遺贈によって取得した財産と、相続開始前3年以内の贈与財産について説明します。
相続の対象となる財産
相続や遺贈によって取得した財産における、本来の相続の対象となる財産については以下の通りです。
金融資産
- 現金
- 預貯金
普通預金、定期預金、定額貯金、定額預金などがあります。口座の名義人が配偶者や子どもなどの名義になっていても、実質的に被相続人のものである場合は「名義預金」として課税対象となります。 - 公社債、投資信託
国債、社債などの債権の公社債や証券会社や銀行で扱っている投資信託です。 - 株式
上場株式と未上場株式があります。
不動産
- 土地
宅地、農地、山林、雑種地や、土地に関する権利として借地権、地上権、賃借権などがあります。 - 建物
家屋、倉庫、駐車場、庭園設備や、建物の権利として借家権などがあります。
動産
- 自動車
- 貴金属
- 家財一式
- 美術品、骨とう
無体財産権
特許権、著作権、商標権や電話加入権などです。
事業用・農業用財産
機械、商品、原材料、農作物や権利として売掛金があります。
その他
ゴルフ会員権、生命保険契約、未収配当金、貸付金、未収金(地代家賃など)、損害賠償請求権などがあります。これらは記録が未整理であった場合、調べるのに苦労する分野です。
みなし相続財産
相続や遺贈によって取得した財産において、本来の相続財産ではありませんが、被相続人の死亡を原因として相続人が受け取った財産は「みなし相続財産」といわれ、相続税の課税対象となります。みなし相財産には次のようなものがあります。
- 死亡保険金
生命保険契約などに基づき被相続人の死亡によって支払われる保険金で、被相続人が保険料を負担していたもの。ただし死亡保険金は500万円×法定相続人の数の額は非課税となります - 死亡退職金
被相続人が在職中に亡くなった場合に遺族が受け取るものです。死亡退職金、功労金など死亡後3年以内に権利が確定したものに限ります。ただし死亡保険金と同様に、500万円×法定相続人の数の額は非課税となります - その他
定期金に関する権利、生命保険契約に関する権利などがあります。いずれも被相続人が掛け金や保険料を負担していたもので、被相続人以外の者が利益を受けるものです。
相続開始前3年以内の贈与財産
相続人に対して相続開始前3年以内の贈与があった場合に、相続財産に贈与額を加えて計算するものです。相続税逃れを避けるために設けられた制度です。
相続財産の評価
リストアップした相続財産がどの程度の金額として評価され課税されるのかについて主だったものについて触れます。
金融資産
- 現金
当然そのままの額です。 - 預貯金
普通預金、通常貯金は、相続開始日の残高がそのまま評価額となります。
定期預金、定期貯金、定額貯金は以下の式にて計算します。
[預入高+相続時点の既経過利息額(相続開始日に解約した場合に支払われる利息額)―源泉所得税額]
いずれも銀行の残高証明書を発行してもらいます。 - 公社債、投資信託
公社債は相続開始日に解約した場合に支払いを受けることのできる金額です。投資信託は相続開始日解約請求または買取請求を行った場合に支払いを受けることのできる金額です。 - 株式
株式は上場しているか否かで評価の仕方が異なります。
不動産
土地
土地は市街地と農地、山林では評価方法が大きく異なります。市街地の土地の評価額はおおむね時価の7~8割程度でしょう。身近な市街地についてふれます。
宅地
宅地とは建物が建っている土地や建てるための土地で、住宅用ばかりでなく事業用の土地も含みます。評価方法は2つあり、路線価方式と倍率方式です。
路線価方式
市街地にある宅地には国土庁が道路ごとに定める路線価があります。この路線価をもとに評価する方式です。路線価方式では、宅地が接している道路の路線価を調べ、この路線価に宅地の面積(平米数)を掛け計算します。土地により奥行や長さなど宅地の形状、立地条件を考慮して路線価に一定の補正率をかけて調整を行います。
倍率方式
路線価が設定されていない地域で適用されるもので、各市区町村が定めている固定資産税評価額をもとに評価する方法です。
小規模宅地の特例
相続人が生活や事業の基盤を失わないように自宅や事業用の敷地について、一定の要件のもとに評価額を減額できる制度です。特定居住用宅地等では、被相続人が住んでいた自宅の敷地を配偶者が取得する場合などの一定の要件のもとに、330㎡まで最大で80%評価額を下げることができるものです。金額が大きいので最大のポイントでしょう。
建物
家屋の評価額は固定資産評価額がそのまま評価額になります。
そのほか、借地では借地権の評価額は自用地(自分で利用している土地)の評価額に借地権割合をかけて求めます。貸宅地では評価が低くなります。貸家は自家用家屋7割で評価します。
最後に
相続財産について紹介してきましたが財産の種類の幅広さに気づかれたでしょう。相続税は[基礎控除額3,000万円+法定相続人の数×600万円]の金額以下であればかかりませんが、相続人の確定、相続人間の遺産分割の協議は必要になってきます。遺産分割で揉めないためにも、相続財産の評価が適正かつ迅速にできるよう、この記事を参考にリストアップ等の準備をしておきましょう。