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仏式葬儀での戒名は「死後の名前」?

戒名について知っておきたいこと

戒名について知っておきたいこと

葬祭業界歴約20年、葬祭ディレクターの小川竜雲です。現在のところ、仏式で葬儀をされるかたが圧倒的に多いですが、仏式で葬儀をすると戒名をいただくことが一般的です。この戒名ですが、そもそもどういう意味があるのでしょうか。「死後の名前」?そういうわけではありません。なかには戒名をいただかずに、生前の名前のままで仏式葬儀をするかたもいます。今回は、仏式葬儀での戒名について解説します。

戒名とは?

戒名は簡単にいうと、寺院の住職の弟子になった証として授かる名前です。戒名は仏道を進むにあたって、仏教の戒律という約束を守ることを誓う儀式(授戒)を行ってから、寺院より授けられるものです。基本的に各家庭の菩提寺が戒名を授けます。菩提寺の住職が師匠であり、戒名を授けられるかたが弟子という関係になります。

したがって、戒名は「死後の名前」というわけではありません。生前のうちに戒名をいただくことが本来の形ですが、生前のうちに戒名を授けられていない故人に対しては、まず生きているかたと同じように授戒を行い、そして戒名を授ける儀式を行うのです。

仏式葬儀は仏教徒に対して行うものなので、仏道に入るための授戒および戒名授与を行って、形を整えてから葬儀を行うということになります。

なお、一般的には戒名という言い方ですが、正式には戒名とはいわない宗派もあります。例えば、浄土宗、曹洞宗、臨済宗、天台宗、真言宗では戒名と言うのに対して、浄土真宗では「法名」、日蓮宗では「法号」といいます。

本当の戒名は2文字だけ

戒名と言わない宗派もありますし、戒名のつけ方は宗派によって違うことがありますが、共通する点もありますので、戒名について、基本的な構成を説明します。

戒名は、基本的に院号、道号、戒名、位号で構成されています。

たとえば「○○院△△■■居士」と位牌に書いてあるとします。この場合、

○○院:院号
△△:道号
■■:戒名
居士:位号

と呼ばれます。つまり、本当の戒名は■■部分の2文字だけなのです。

では、それ以外の院号、道号、位号は一体何を意味しているのでしょうか。ある住職がおっしゃるには「大雑把な言い方をしてしまえば、これらは飾り」だそうです。多大なる社会貢献をしたかたを称える意味や、寺院に対する大きな貢献をされたかたへの感謝の気持ちという意味での装飾ということです。

なお、○○院の部分である院号は、つかない場合が一般的です。原則的に院号は、よほどの社会貢献や、寺院への貢献があったかたにのみ付されるものだからです。また、○○院の上位とされる「○○院殿」と示される院殿号もあるのですが、これは院号をいただける人よりも、さらに社会貢献や寺院への貢献が必要であり、なかなか目にすることはありません。

そして位号についてですが、上記の居士は男性につけられるもので、女性の場合には大姉となります。位号は、居士および大姉のほか、信士、信女など、階位や性別、年齢によって使われるものが変わってきます。

宗派別の戒名

ここでは主な宗派について、それぞれ戒名のつけ方や特徴などを紹介します。ここで紹介することを覚えておくと、位牌を見ただけでどの宗派なのか、ある程度わかるようになります。

浄土宗

院号 誉号 道号 戒名 位号
○○院 ●誉 △△ ■■ 居士、大姉、信士、信女など

浄土宗の場合、道号の前に誉号(よごう)がついたものが見られます。誉号がついて、道号をつけない場合もあります。位牌に書かれた戒名を見て、誉号がついていれば浄土宗とわかります。

真言宗、天台宗

院号 道号 戒名 位号
○○院 △△ ■■ 居士、大姉、信士、信女など

真言宗および天台宗は院号、道号、戒名、位号で構成される基本的形式です。ただし真言宗では、一番上に梵字が1文字つけられる場合もあります。梵字とは古代インドに由来を持つ文字で、秘められた力があるといわれていて、神仏を1文字で表わしています。

真言宗でつけられることが多いのは「ア」という梵字で、大日如来に帰依するという意味があります。なお、子どもは「カ」という梵字が使われ、地蔵菩薩の導きに従うことを意味しています。

曹洞宗、臨済宗

院号 道号 戒名 位号
○○院 △△ ■■ 居士、大姉、信士、信女など

曹洞宗、臨済宗の戒名も院号、道号、戒名、位号で構成されます。

葬儀の際に使用する白木の位牌には、一番上に「新帰元(しんきげん)」や「空(くう)」と書かれていることがあります。これは四十九日法要を過ぎるまでの表記で、本位牌(黒塗りの位牌)を作成する際には表記されません。

「新帰元」も「空」も、“新しく仏様になりました”という意味を持ちます。

日蓮宗

院号 道号 日号 位号
○○院 法△、妙△ 日■ 居士、大姉、信士、信女など

日蓮宗は、戒名ではなく「法号(ほうごう)」といいます。

道号の部分は、男性であれば「法」、女性であれば「妙」という1文字がつけられることが多いです。また、他宗派の戒名にあたる部分となる日号には、開祖である日蓮の教えを受け継ぐ者を示す意味で「日」の1文字が入ることが多く見られます。

浄土真宗

院号 法名 位号
○○院 釋、釋尼 日■ なし

浄土真宗では、戒名ではなく「法名(ほうみょう)」といいます。

他宗派の道号にあたる部分がなく、ここには「釋(しゃく)」か「釋尼(しゃくに)」という字が入ります。釋は男性、釋尼は女性につけられます。

また浄土真宗の場合、位号がつきません。浄土真宗では平等という考え方が強く、階位を示すことになる位号はつけないのです。院号も元々はつけないことが一般的でしたが、他宗派の影響で稀につけられる場合があります。

戒名なしで葬儀を行うこともできる?

本来の形ではありませんが、戒名なしでも仏式葬儀を行うことは可能です。実際に戒名なしの仏式葬儀を行うかたもいらっしゃいます。なお、生前の名前のことを「俗名(ぞくみょう)」といいます。

ただし菩提寺がある場合には、俗名で葬儀を行うことは基本的にできません。俗名で仏式葬儀ができるケースとしては、菩提寺がない場合です。この場合、葬儀社から俗名で葬儀をお願いできる寺院を紹介してもらうことが一般的です。例えば、現時点では菩提寺がなく、菩提寺は葬儀後に改めてじっくり探したいので、ひとまず葬儀では俗名のまま行うといったケースがあります。

なかには「そもそも戒名というものに抵抗がある」という理由で、俗名のままでの葬儀を希望されるかたもいらっしゃいます。しかし、戒名は仏教徒となる証として授けられるものですから、この場合には「そもそも仏式葬儀で行う必要があるのか」という点についても、再考してもよいかもしれません。

最後に

今回は、仏式葬儀での戒名について解説しました。戒名の意味や、宗派ごとの戒名のつけ方などがおわかりいただけたと思います。

戒名は仏の道に入るときに授けられるもので、「戒名を授ける」という儀式は、多くの宗派で非常に重要視されています。実状としては葬儀のときにいただくことの多い戒名ですが、「死後の名前」というわけではなく、とても重い意味を持っているのです。